思えば、生まれてきてからいいことなど一度もなかった。
「はやく死にたい」
ずっと、そう願っていた。
学校は嫌いだった。幼稚園のころからそうだ。学校に行っていてよかったことなど何もなかったし、いい思い出などひとつもない。
なぜあんなにも学校が嫌いだったんだろうか。
いじめや体罰。有ったか、無かったか、そういえば、それはあった。でも、それが原因かといえば、違うと思う。学校というもの自体、高圧的な教師や閉鎖的な教室の中での人間関係、つまらない授業を聞きながらじっと黙って座っていなければならないその抑圧感、そういった学校的なもの全てが、生理的に僕にはあわなかった。そういうのが正確だろう。
学校にさえ行っていなければ、もっと健全に育つことが出来たのに。そういう思いは拭えない。結局、学校教育が僕に与えてくれたのは、目に見えない苦痛と思い出したくない嫌な記憶だけだ。
それでも、僕は不登校にはならなかった。なれなかった。
本当は死ぬほど嫌な学校なのに、行き続けるしかなかった。それ以外の選択肢はなかった。反抗する勇気もなかったし、他にやることなど思いつかなかった。
できるだけいい学校に入って、いい会社に入る。当たり前のようにそう考えていた。結局は、自分がいちばん嫌いな学歴社会的な価値観以外のものを、自分の中に持つことは、当時は出来なかったのだ。
いい学校に入って、いい会社に入る。
誰でもそうするものだと思っていたし、誰にでもできることだと思っていた。少なくとも、自分にそれができないなど、思いもよらなかった。
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